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  [概要: バラナシの宗教抗争?!]

 第13話 暴動っていったいナニ?! [バラナシ]

 ところで、なんだかこの日は、昨日に比べて街がざわついている気がした。

 でも、昨日は列車駅から川まで、歩いて来ただけ。今日は、町の中心を歩いたり、はしゃいでいたからそう感じているだけなのかもしれない。
 それにこれまではガイド付きの車で連れ回されていたし、自分たちで町を歩いていなかった。

 きっとインドの活気はこういうものなのだろう。

 数分後、すれ違った日本人の青年が声をかけてきた。
 彼はバックパックを背負っており、これからどこかの街へと向かうところのようだ。

「日本の方ですか~?」

「はい、そうです。これからどちらかに行かれるんですか?」

「今日ここで暴動が起こって外出禁止令が発令されるらしいですよ。知ってました?」

・・・は???

 外出禁止令って一体なに??


 バラナシはインド全国にあるいくつかのヒンドゥ教の聖地の中でも最も神聖視されている地である。

「死ぬならバラナシで死にたい」

と老い先短い人などが、何日もかけて歩いてこの地にやってくることも多いという。

 ガンジス川はシヴァ神の髪の毛からしたたり落ち、座った足下から流れ出ていると言われる。
 従ってこの川はヒンドゥ教徒にとっては「清らかにして聖なる川」である。
 また、特にこのあたりは、沐浴用のガートが東向きに設置されており、早朝に沐浴すると昇る朝日を浴びながらの沐浴となり、よりいっそうからだが清められるのだろう。


 さて、そういうヒンドゥ教徒にとっての「聖地」でも、ヒンドゥ教徒だけが暮らしている訳ではない。
 そして、この町に住む異教徒にとっては、バラナシは聖地でもなんでもなく自分が暮らすインドの町の一つであろう。
 
 またヒンドゥ教は日本の神道に通ずるところがあり多神教の宗教である。人々は自分の好きな神様を祀り、像やブロマイドを飾ったりしているが、イスラム教は唯一神アラーのみを神と認め、偶像崇拝を禁止するという、一見正反対な宗教である。
 
 インド全土で宗教対立の話はよく聞かれるが、この町はヒンドゥ教徒にとって非常に意味のある町であるだけに、対立が最も激しくなるのだと思われる。

 私は多くの日本人と同じように「宗教は?」と聞かれれば「仏教」と答えるし、七五三もやったし、初詣も行くし、キリスト教式の結婚式に招待されても出席するし、というなんちゃって仏教徒で、平和で自由な時代に生まれた日本人である。

 だから、「そんなの他人の宗教は尊重しあって、共存すればいいじゃん」なんて気楽なことを考えていた。でもきっとそれは、私が真剣に信仰心を持っていないから出てくる発想だ。

 宗教戦争もなにもかも「テレビや歴史の教科書の中の世界」だったのだから。

「外出禁止令って、一体なんですか?」

「暴動が起こって危ないから宿から出ちゃだめってことみたいですよ。
 僕は今のうちにバラナシをでちゃいます」

 ってことは、暴動起こすぞ~っておふれが町中に出てくるっていうことか。

 日本で起こるのはせいぜい抗議のデモ行進くらいで、外出禁止っていうほどの暴動自体想像ができない。

「今日だけで、明日は大丈夫みたいですよ~」

って、そういうモノなの???


 我々は明日、この町をでる列車のチケットを持っている。それが本当ならありがたいのだが。


 結局、この日はほとんど1日中ガンガーのほとりにいるしかなかった。

 昼にさしかかる頃には、通り沿いの店のシャッターがすべて閉められた。

 人通りもびっくりするくらい少なく、人の気配を感じて振り返ると、険しい顔をした男が集団でざっざっざっと行き交っている。

 怖くなって一目散に川っぷちに駆け戻った。迷路みたいに入り組んだこの町で、憶えた手の細い路地を走って走って川まで戻った。
 だって、警官ですら、狭い路地裏に入り込んでおとなしくしていたもの。


 川に戻った我々は、一日中ガンガーのほとりから離れず、洗った洗濯物を乾かしたり(ガート近くのコンクリに並べていると早く乾く)、インド人の男の子(朝のビンディ売りの子の連れ)と話していたりしていた訳だが、そんな我々のそばを通ったボートの乗客(欧米系などの観光客)は、我々を見てかしゃかしゃとシャッターを切った。

 外出禁止で殺伐としている町が背後にあるのに、一方でビデオやカメラを片手にボートから沐浴見物をする観光客。そして、その人たちに写真を撮られたあたしたち(インド人と外国人の交流か?)。
 このギャップには脱力した。

 川の向こうは安全ってか?ガイドさんも慣れたもんなんですかね。


 結局、この日は大きな暴動にはならなかった様だが、あの張りつめた町の雰囲気は忘れられない。

タグ:インド|バラナシ|暴動

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