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  [概要: 物乞いに腕を捕まれ狼狽。]

 第14話 カルチャーショック受けた? [バラナシ]

 何をしたわけでもないのに、バナラシを発つ日がやってきた。

 この2日間というものガンガーと宿周辺の路地裏の店以外どこにも行っていない。朝に昼にそして夜にとガンガーを眺めていた。

 デリーで出会った旅行代理店のボスは、私に「カルチャーショックを受けてこい!」と言った。

 特別なことをするわけでもなくなんとなく過ごしたこの町で、思えば私は確かにカルチャーショックを受けたと思う。

 路上に、路地裏にどどーんとのさばる聖なる牛
 聖なる牛の排泄物をこねくり回すご婦人(乾かして燃料にする)
 聖なるガンジスで沐浴する人々
 そして、「外出禁止令」もどき。

 教科書の写真で見ていたインドといえば、大抵がこの町で(タージも載っているが)、インドといえばバラナシを例に挙げる大人が多かった。
 ただ「沐浴」だったらこの町以外でも見れる。別に聖なる川はこの町以外も流れているし、ガンジスの支流も聖なる川だ。

 でもこの町は、それだけじゃなくって、来てみて初めて自分に気づく自分の感情がいろいろあった。


「あなたもガンジス川で沐浴するの?」

そうボスに尋ねた私に、彼はこう答えた。

「しないよ。だって、汚ったねぇじゃん」

 ヒンドゥ教徒にとっては清らかで聖なるガンジスは、実際には生活排水や工業用水などが流れ込み、よどんだ色をしており、お世辞にもきれいとは言い難い。

 後で聞いたら、彼はムスリムだったけど、でも、カルチャーショックを受けてこい!って言うことは、ヒンドゥを理解はしないにしても「違う文化を持つ町」だと彼もわかっていることになる。

 彼はインド人だけど、異教徒と言う点では私と同じだということだ。


 宿をチェックアウトすると、行きと同じく駅まで歩いた(基本である)。最寄り駅バナラシ駅から寝台特急にのりデリーへと向かう予定だ。

 迷わないようにと、メインガート付近から駅へと向かったため、ものすごい渋滞。
 日本のように歩道がきちんと作られているわけでもなく、道の端の端までリキシャで埋め尽くされ、通行人はそのリキシャの合間を縫うようにして車道をジグザグ歩く羽目になる。

 こういうときは日本の秩序が懐かしい・・・。歩道も路側帯も当たり前だもんな~。

 1分に10センチ進めばいい方、というくらいの大渋滞に関わらず、リキシャーワーラーは「へい!ジャパニ!のらねぇか?」とくる。
 どう考えても歩く方が早い。乗るわけないでしょ。

 サイクルリキシャ、オートリキシャ、人、露店、様々なものをかき分け、ぐんぐん進んでいった。

 ふと気付くと、1人の老人が私にぴったりついて来ていた。
 どうせ物売りだろう。話半分で無視していたのだが、ふと、老人の言葉が耳に入った。

「私は哀れな老人です。今日のご飯を食べるためにRs.50ください」

 なんと彼は物乞いだった。予想もしてなかった展開にビックリしてしまった。
だって、今までいた物乞いは、道路の隅っこに座って「1ルピー、1ルピー」と言っているだけで、ついて来たりしなかったから。

 Rs.50と言えばここバラナシでの宿代である。
 いきなり、そんな大金を提示されてむかついてしまった。1ルピーと言われてお金をあげたことだって一度もないくせに。


「なに?Rs.50??ふざけんな!No!」

何日もインドにいると、金銭感覚がインドのそれである。

 老人はものすごい形相で「何故だ!」といい私の腕をぎゅっとものすごい強さでつかんできた。

 その瞬間、ものすごく怖くなり、「さわらないで!」と老人の手を振り払ってしまったのだが、よくよく考えると私も悪かったのかもしれない。
 ずっと曖昧に適当な返事をしていたからその老人は期待してついてきていたのだ。


 がりがりにやせ細って、今にも倒れそうなその人を何十メートルもいや何百メートルも歩かせてしまった。
 Rs.50と言えば180円くらいに過ぎない(当時のレートで)
 それくらいあげても良かったなと思ったりもするのだが、でも、この人だけに、Rs.50をあげるのはなんだか腑に落ちないし、Rs.50を日本円に換算するのもなんだか、納得いかず、一人葛藤した私。


 腕を捕まれた瞬間、その腕を振り払ってしまったのは、私の本性だろう。
 勝手に人の国にやってきて、面白がって町を見物して、そして、現実にこういう場面に向き合うと狼狽し、醜い?感情が見え隠れする。そんな自分に初めて気づいた。


 最後の最後まで、カルチャーショックは受けっぱなし。

 でも、それはきっと初めて自分の足で歩いたインドの町だったからだ。

タグ:インド|バラナシ|乞食|物乞い

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