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インド(スピティ編) > 第16話 テント村の大道芸人 (キー) [概要: 人が集まるところには芸人もやってくる。] 第16話 テント村の大道芸人 (キー)
Nさんは今とても行動的。実は彼はカメラが趣味で、趣味を通り越して仕事に出来たらなぁなんていう微かな野望も胸に抱いている。だから、今のこの時、生き神様にお会いできて幸せ一杯の素敵な笑顔で、しかもめい一杯おしゃれした人たちで溢れている今が絶好の機会なのだ。気が付くと会場のあちこちでカメラを片手にうろうろしている彼が目に付く。 さらにしばらく後、今度は彼はとある日本人女性と話していた。よし!ナンパしろっ!がんばれ! 実は、この女性とは我々も一昨日出会っていた。ヒマラヤの強い日差しを避けるため赤い日傘を広げ、眼鏡と鍔の広い帽子を身につけたとても品の良さそうな人だった。 「去年もここに二週間くらいいたんです。で、また今年も(笑)」 スピティーが好きなんですよねぇっていう彼女の笑顔をみて、妙にほのぼの。男だったら惚れてたりして。 謝さんといい、この彼女といい、スピティ好きの人のオーラって和む~。 で、今、Nさんが彼女をナンパっていうのは、ほんとの意味でのナンパじゃなくてジープの同乗をお願いしている。 明日マナリまで戻るジープが高額で同乗者を探しているのである。 「ジープには乗りたいんですよ。でも、もうお金がなくってバスにしか乗れないんです」 ナンパ失敗!くそう。マナリまで3人で5000ルピーか。 「マナリまで5000ルピーなら行ってもいいよ。だたし3人までそれ以上人が乗るなら行かない」 相変わらず異様なまでに車をかわいがる。例のゴンパ巡りの時のドライバーの台詞だ。 「そんな車こっちから願い下げだ!」と言いたいのをぐっとこらえ(・・・こらえてなかったかもしれないが)、何とか4人までを了承してもらう。 私はまだまだ旅程に余裕があったのだが、Nさん達の帰国日が迫っていた。だから車を確保しておく必要があったのだ。 キーからマナリまで、ローカルバスだと値段は110ルピー。ただし所要時間が14時間もかかる。つまり、どんなに朝早く出発しても夕方のデリー行きのバスに乗り継げない。車でもぎりぎりのところである。 私は時間には余裕がある物のこれ以上ここにとどまる気は全くなかった。だから、明日一緒にマナリまで下るつもり。 「しょうがないね。3人で帰るしかないね」 そんな話をしながら我々はテント村への坂道を降りていった。
さらにその後、父親は男の子を縄で縛り付け、綱渡り用に渡してある綱にぶら下げた。 そして、遊園地の回旋塔の様にぶら下がった男の子をぐるぐると高速で回し始めた。 うーん・・・これの何処が芸なのかが全くわからない。男の子は一層泣きわめき、それを見ていた周りの外国人は「クレイジー・・・」と顔をしかめている。 その光景を見ていた私は思わず、「ああ、かわいそうだなぁ・・・」と呟いた。 「かわいそうって言ったらだめですよ。俺らがかわいそうっていったら彼らは一層みじめになる。 俺らはただ彼らの芸をこの目でしっかり見てやって、拍手してやらんと。」 私はNさんのその言葉に驚き、ものすごくショックを受けた。私は彼らがこうやってお金を稼がなければならない現実など全く頭になかった。ただ、表面的に同情しているだけだ。 私が無理矢理芸をさせる父親の姿に嫌悪感を抱いていた時もNさんは目を逸らすことなく彼らを見つめていた。 振り返ってみるとここまでの旅の間、彼の真摯で率直な発言には驚かされた。そしてそれはたいてい正しかった。 この芸を見て、「素晴らしい!」と思っている人は1人もいないだろう。 たぶん、あの女の子も両親も自分たちが同情の目で見られているのをわかっている。でもきっと彼らにはこれしか生きる道がないのだ。 芸のクライマックスは少女の綱渡りだった。端まで渡りきると頭の上に器を乗せ、渡りきっては乗せ、徐々に枚数を増やしてゆく。 Nさんは、彼女の芸を笑顔で見守り、成功するたびに拍手を送っていた。 私は彼女の勇姿を一枚だけ残す事にした。そして、ショーが終わったその後には、少女に差し出されたお皿に10ルピー札を一枚入れた。
ところで余談ですが、芸の終了後、お母ちゃんは少女に集金係として会場を回らせたが、余り集まらなかったらしい。
だから、ここぞとばかりに男の子にお盆を持たせ会場を回らせていたが(このときもまだ泣いていた)、ほとんどの人が男の子のお盆にはお金ではなくあめ玉を置いていった。 世の中甘くはないな~。
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