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インド(スピティ編) > 第17話 そして再び1人旅(キー-マナリ) [概要: これまで一緒に旅した二人と別れて1人でインドに繰り出した] 第17話 そして再び1人旅(キー-マナリ)キーの村で迎える最後の朝。ゴードンとクリスは相変わらず爆睡中だ。 音を立てないようにそーっとテントを出ようとした時、ゴードンがぼそっと声をかけてきた。 彼とは最初の晩に一緒に食事をしたっきりだった。 もう、60歳くらいだろうか?体が高地に順応しきれないらしく、高山病で寝てばかりだった。 「イギリスで俳優をしてるんだよ」 そんな彼がここに来たのはどういういきさつだったのか。聞いて見たかったが、そんな英語力も勇気もなく。同じく英語を母国語としているクリスとの会話など宇宙語みたいだったし。 「ゴードン、元気でね。」 精一杯の英語でつぶやくと、布団から延びた毛むくじゃらの太い腕が左右に揺れた。 キーからマナリの行程は、比較的順調だった。 ドライバーは相変わらず慎重な運転だったが、町に向かう道なのでゴンパ巡りで行った道より整っていたからだ。 ただし、砂利を山積みにしたダンプとやたらに鉢合わせし、しばしばそれをやり過ごさねばならなかった。だからバスだと14時間もかかるんだなぁ。 時には山の麓で30分も止まった。頭上の山にはダンプが一定の間隔で連なって走るのが見える。 木が一本も生えていない生気のない山道を黒い四角い物体がうごめいているのを見ると、なんだかそれはゴキブリのようだった。 マナリに近づくにつれて、道が行きよりも整っているのがわかった。新しいアスファルトが黒光りしている。明らかに舗装道が延びていたのである。 そして、道が整ってきたのを皮切りに、突然クアリスのスピードが上がり、結局、我々の心配をよそに車はきっちりと15時過ぎにマナリに着いた。 車を降り、約束の5000ルピーを支払うと、ドライバーは一枚一枚丁寧に枚数を数えて確認し笑顔で去っていった。 カラチャクラはまだ始まったばかり。ここでまたスピティに行くお客を拾うのだろうか? 「スピティまで5000ルピーだよ。ただし、3人までしか乗せない」ってね。 車を降りると、突然Nさんが今までになかったようなフットワークで走り回る。 「俺はデリーから200ルピーで来たんですから、これ以上1ルピーもだしませんからね!!」 昨日までの彼とはまるで別人で、私とKさんはあっけにとられていた。 片っ端から旅行会社に入り、バスの値段を尋ねてまわる。バスターミナルに表示されている正規の値段よりも、旅行会社の方が値引きに応じてくれることが多い。ましてや今日のバスだ。売れなければ空席ができるだけである。 後日わかったのだが、Nさんがデリーから乗って来たのは、ノーマルプライスのバスだ。 デリーの旅行代理店では、ノーマルとデラックスの二種類のツーリストバスを運行している。 ノーマル料金の場合、バスがぼろいのは当然のこと途中で乗り換えまであるらしい。それも、ローカルバスに。 デラックスバスは、乗り換えもなくマナリまで直でやってくる。一応、窓もちゃんとついている(Nさんのバスは窓ガラスがなかったらしく、雨が吹き込んで大変だったらしい)。 旅行代理店で、デリーまでのデラックスバスを250ルピーと表示しているのは、ボッタクリでも何でもなく正規料金なのだ。値引きに応じてくれた人が良心的なだけである。 まあ、その気迫が功を奏したのか、彼は200ルピーでバスチケットを手に入れた。 そしてその足で今度は「毛布売ってきます!」とどこかに走り去った。 数分後、「毛布を買った店で半額で買い取って貰いました」と満足げに笑顔で戻ってきた。
支払いの段になると彼は一枚の100ルピー札を差し出した。 おばちゃんは「お釣りがないよ」と困った顔をしていたが「いいよ。取っておいて」とあっさりと言う。 ミサンガは1本10ルピーである。それを3つ、100ルピーで買ったことになる。 「ホントは100ルピー分買ってあげようと思ったんですよ。でも、WITH ME ! とか I LOVE YOU とかはいらんし(笑)」 そんな彼の前でしっかりと1本10ルピーでミサンガを買った私ってちょー格好悪い!しかも、おまけまで貰っちゃったし・・・。 Nさんはデリー行きのデラックスバスもしかり、露店のインド人から数珠を買うのにも思いっきり値切り倒していた。そして要らなくなった毛布はしっかり売り払った。 しかし、大道芸には気前よくチップを出し、ミサンガ代もはずんでいた。 彼のお金の使い方はかっこいいなぁと思うと同時に、態度のギャップがちょっとおかしかった。 マナリにやって来てからこの1週間、KさんとNさんとずーっと一緒だった。私は彼らの旅のほぼ全日程を共に過ごしたことになる。 私は一緒にデリーに戻りたい衝動を抑え、ここで別れる事にした。ちゃんと予定を組んでいた訳ではないが、とにかくデリーへ同じ行程で戻りたくなかったからだ。 夕方になり、二人と共に町の麓のバスターミナルへと向かった。 お名残惜しくバスの外でおしゃべりを続けていたが、出発時間はあっという間にやってきた。 一緒にバスに乗り込む二人の姿をうらやましい思いで眺めつつ、1人、外でバスを見送った。 さあてと。またひとり旅だ!!
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