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  [概要: やっぱり聖地では宗教抗争は度々起こるのだ。]

 第24話 くりしゅなー・プレイス(その1)(デリー-マトゥラー)

ソーハン 【厚化粧ソーハン】
マトゥラーではこのソーハン(左)にふりまわされっぱなし。 毎日くだらない事を言いあってました。 ヤムナー川沿いのアグラホテル近くに生息しているので、 今も違う旅行者相手に騒いでるんだろうな。

 朝の8時半。ニューデリー駅からマトゥラー行きの電車に乗った。といっても、マトゥラーは途中駅である。 今までは常に目的地が終点になる列車に乗っていたが、今回はそういうわけには行かなかった。 折り損ねたら大変なので、検察に来た車掌に到着時刻を確認する。

 「マトゥラーに着くのは11時ゴロだと思うよ」

10時半を過ぎてからというモノ、列車が停車する度に窓の外に釘付けだった (だって、列車はがらがらでぜんぜん地元民が乗ってないんだもん)。

 マトゥラーの駅にはほぼ予定通り到着した。
 多少迷いつつも駅構内から出ると、私を見つけた数十人のリキシャーワーラーが前方からものすごい勢いで駆け寄ってくる。そういえばこの駅で降りる人すごく少なかったのよねぇ。彼らも仕事取るのに必死だ。

 一番先に私を捕まえた老人に「町までいくら?」と聞くとあっさり「10ルピー」と答えた。
 聞いていた相場通り。

「ホーリーゲートまで連れていって。そこまで10ルピーでいい?」

 勝手に親父御用達のホテルに連れて行かれても困る。 町の中心まで出てからホテルは自分で探すつもりだった。

 駅から町の中心までの道は緩やかに下っていく。 サイクルリキシャのペダルも軽いのか、すいすいと進んでいく。

「ホテルに泊まるんだろう?ここもホテルだけどここにする?」

 この町はデリーのメインバザールやカルカッタのサダルストリートの様にホテル街というモノがないのだそうで、リキシャワラは ホテルの横にさしかかる度にこちらを伺う。

「えー、このホテルは高そうだよー。もっとチープなところに行く。ヤムナー川の近くに行こうかなと思ってるんだよね・・・」
「ヤムナー川か、よしわかった。アグラホテルだな?」

 実はヤムナー川のほとりにはホテルはアグラホテルただ一軒だけなのである。
 ここはマトゥラーのくせに何故にアグラホテルなのか、そのネーミングセンスは今ひとつわからないが、 とにかく目的地がはっきりしたところで、俄然張り切りだす親父。
 アグラホテルに到着すると、特に追加料金をせびることもなく10ルピーを受け取った。 流れ落ちる汗を拭きながら「いやー、疲れたよ」ってにこりと笑う。

 「チップくれ」とか、「町の入り口までが10ルピーでホテルまでは20ルピーだ!」なんて、言うそぶりも見せない。マトゥラーっていい町の予感!?
 アグラホテルはヤムナー川のほとりに建つ静かなホテル。っていうか、この町自体がとても静かなのだ。
 巡礼者、地元民、観光客、サドゥに物乞い・・・。バラナシの喧噪を思い浮かべると、同じ聖地とは思えない。 川の畔のボートマンも同じ職業の人たちとは思えない。ただでさえ客が少なそうなのに、その少ない見込み客の私にでさえ一言二言声をかけてくるだけである。

 「ボートには乗らない」「あ、そう。」で終わり。のんきだなぁ、君ら。

 この町はヒンドゥーの聖地と言うだけあって、人数は少ないとはいえ、サドゥがさまよっていたり、ヤムナー川にあるガートで沐浴する人々がいたりする。
 町のヒンドゥー寺院のほとんどがクリシュナを祀っていて、そこらの商店には像、キーホルダー、ペンダントなどなど、いろんな種類のクリシュナグッズがずらっと並んでいる。
 そしてお約束。聖なる川ヤムナー川の水(つまり聖水か)を持ち帰るための小さな銅製の壺も勿論売っている。
マトゥラーのバザール
マトゥラーのバザール

 バラナシから観光客と観光客目当ての商売人を追い出して、さらに規模を小さくするとマトゥラーができあがるという感じでしょうか。余計な土産物屋や客引きが全然いないので、好きなように時間を使えるのが嬉しい。

 ただ、だからといって誰からも無視されるか言えばそうではない。観光客が少ない分、外人と言うだけで異様に目立っていた。
 河原で座っている私にわざわざチャイを入れて持ってきてくれる人がいたり、 興味本位でいろいろと質問を浴びせかける若い子もいる。 ただ、腹黒い心を持っているワケではないので、控えめだし、ぜんぜん苦痛ではない。
 通りを一回通っただけで顔を覚えられてしまうから、「ハッロー、メイドインじゃぱーん!」などと 会う度に声をかけてくるおかしなサドゥーもいた(そりゃー純日本製よ。私は)

 アグラホテルのすぐ近くには小さなお店が数件並んでいた。そこの一番手前の雑貨屋で少年が店番をしており、 「ここ座れ、すわれ」と店の下から木製のイスを引き出した。
 やたらと調子のいいその少年の名はソーハン。今となっては会話の内容はほとんど憶えていないのだが、弟、従兄弟、叔父とソーハンの男性の親戚とは一通り顔見知りになった。この周辺の店は全てソーハンの親戚スジの経営なのだ。

「写真撮ってよ、写真!」「今度は俺が撮ってやる!」「日本のコインを頂戴!」

 外国からやって来た観光客が何を持っているかはもはやお見通しなのである。

「このシャツは何処で買ったの?」私のシャツのそでぐりを指で触りながら聞いてくる。
「ええーー。絶対これインド製だよ。日本製?違う違う。メイドインインディアー」

 違うやーい。ホントに日本で買った服なんだよ。それも結構なお金払って買ったんだい!今回は1人旅だから目立たないようにインドでもありそうな色にしたんだよー・・・。
 子供相手になにムキになってフォローしてんだか・・・。なんだかんだ言って、日本人である私は日本製品にプライドを持っているらしい。

 夕方になり、クリシュナを祀っているという寺院に行ってみることにした。
 通りがかりにあったヒンドゥー寺院らしき建物への入り口は、参拝客でごった返しており、 通りがかりの旅人が入っていいものかどうかとちょっと躊躇してしまうような雰囲気である。
「うーむ。とりあえずもっと空いているときにしよう・・・」とその場をやり過ごすと、その先の道は二股に分かれてしまった。

 地図によるとこの辺りがジャマーマスジットのハズである。小さい町だとはいえ、デリーにあるジャマーマスジットとは大違い。
 ヒンドゥーの聖地では大きな顔をして建てられないのかなぁ?こ汚い壁に囲まれて、その壁の隙間からわずかに見える建物が何となくイスラム風に見える。でも、確信が持てないので、やはり怖いから入れない。さっきからこんなんばっかり。

 とりあえず、分かれ道を右側に進んでみた。しかし、狭い道に車とリキシャと自転車とものすごい数の人が、我先に通ろうと押し寄せており、結局のところ人間1人も通れるスペースがない。
 仕方がないので分かれ道まで戻って左に進んで見ると、今度はウソのようにだーれもいない。
「?なんでだろう?」と思いつつすたすた歩いていると、よーーく見ると前方の十字路に・・・見えるのは警官???

 ぴーーーーーーーー。

 突然首からかけていた笛を鳴らし、「こっちに来ちゃだめだよ、君!」と身振りで示す。

ヤムナー川
ヤムナー川でござる
 「なんだよ~、通行止めぇ?」

 くるりと後ろに向きなおると、遠くで沢山の目がにやにやしながら私のことを眺めていた。なんだよー。教えてくれよぅ。

「ヒンディーマン あーんど ムスリム ファイト!」

 どうも今回もまた宗教抗争らしい。ここ聖地だもんなぁ。バラナシでもそうだったしなぁ(もっと緊迫してたけど)。 独立記念日だっていうことも関係しているのかしら?

 結局、行くところは川しかなくなってしまい、何も考えずにヤムナー川のほとりに座っていた。 でも、残念ながら、西向きじゃないので日は沈みません。あしからず。


- インド旅行記:インドの山の奥深く(ラダックはずれてスピティへ) 目次 -
プロローグ
第1話 けだるい彼との出会い
第2話 シヴァの祭りでメインバザールに行けない旅人
第3話 国民的スポーツはクリケットとカバディ
第4話 私もまだまだひよっこだな・・・。
 →【写真】オールドデリーの観光名所
第5話 マナリについたら雨だった・・・がーん
 →【余談】本当にでたインドの痴漢!ねぱり
第6話 断崖絶壁?を行く
 →【写真】インドの山道 (マナリ-サルチュ編)
第7話 自己主張もほどほどに
第8話 旅は道連れ。心は弾む。
 →【余談】インドのお札は日本製?!
第9話 そんなクリスに首ったけ
 →【写真】インドの山道 (マナリ-キー編)
第10話 風呂ナシ、飯ナシ、恥もナシ
 →【写真】カラチャクラフェスティバルのテント村
第11話 砂曼陀羅の儀式に法王現る。
第12話 ラルン、ダンカール、タボのゴンパ巡り(1)
 →【写真】ダンカールの写真館
第13話 ラルン、ダンカール、タボのゴンパ巡り(2)
第14話 ダライラマ法王見参!

第15話 幸せのオーラで世界が平和になるのだ
第16話 テント村の大道芸人
第17話 そして再び1人旅
第18話 英国調。なのに気分は温泉地
 →【余談】さらにインドの痴漢の話。今度はインド人
第19話 じじいのナンパに逃げまどうあたし
第20話 もーー、家族連れでも油断できないのか?
第21話 わんだふるアムリトサル!(その1)
 →【写真】スィクの聖地 黄金寺院
第22話 わんだふるアムリトサル!(その2)
 → 【写真】アムリトサルのローカル
第23話 何となくつなぎで寄ったデリーの1日
第24話 くりしゅなー・プレイス(その1)
第25話 くりしゅなー・プレイス(その2)
 →【写真】マトゥラーあれこれ
 →【余談】初めてインドでヒンディ映画を見た話
第26話 ナメてんのかぁ~!エアインディア!(1)
 →【写真】デリーの写真をちょこっとだけ
第27話 ナメてんのかぁ~!エアインディア!(2)
第28話 ナメてんのかぁ~!エアインディア!(3)
エピローグ

タグ:インド|クリシュナ|ヒンドゥ|マトゥラー|聖地

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