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  [概要: またキャンセル待ち。でも、キップ回して貰いました。]

 第9話 切符の買い方指南(裏技)(アマダバード-ニューデリー)


 さて、今日はアマダバードからデリーに戻らなければならない。 キャンセル待ち(WL)と書かれたチケットを握りしめ、一週間前に訪れたアマダバード駅に隣接する列車予約オフィスに向かい、女性及び外国人用のチケット窓口の前に並んだ。

 順番を待ちながらぼーっと待っていると1人のインド人の女の子が近寄ってきて、こう言った。

「私が買うのであれば、家族全員のチケットをこの列で買えるのでしょうか?」

とても高度な質問である(そうか?)

 彼女はお父さんと一緒に旅をしていたようだ。 通常のローカル用チケット窓口はどこも女性用の二倍は並んでいるので、女性用の窓口で買えば早く買えるのかと考えたのだろう。

 しかし、ちょっと待て!そんなことは私の前に並んでいるインド人女性に聞くべきである。 どう考えても日本人、間違ったとしてもネパリの私に聞くなよ。

「わからないけど、チャレンジしてみたらどうですか?ダメなときの場合にお父さんに向こうに並んでおいて貰えば?」

 二等列車の切符は、日本のJRや私鉄と同様に、通常、発車時間に併せて当日買うが、長距離を走る特急列車などの二等(寝台シート)以上の座席は予め予約することができる。 ただし、その予約の際、申込用紙にいちいち個人情報(名前、年齢、性別、住所、電話番号など)を記入しなければならない。

 まあ、都合で同伴男性が買いに来れない場合もあるのだから、申し込み用紙に男の名前が書かれていたからというだけで女性専用窓口で切符を売らないとは思えないが。
 女性専用窓口はあくまでも社会的に立場の弱い女性のために作られているのだし。

 ちなみに、外人専用窓口では、外人向けにあらかじめインド国鉄がキープしてくれている座席の分を売ってくれるのだが、ツーリストが少ないエリアだと外人用の席も少ないのかなぁと思ったりした。

「席はない。また出直して」

 一週間前にWLの13番だったのに、あまり番号が動いていなかった。
 この仕打ちも二度目なのでもはや動じない。

「うーむ・・・。どっかの旅行会社に頼むかなぁ。この際飛行機でも何でもいいや」

 今のようにぎりぎりで、しかも混んでいる時期に、外人が直接航空会社に行っても拉致があかないのはわかっている。 席があったとしても「ありません」と言われるのが落ち。 コミッションを取られようとなんだろうと、コネを使うのが一番手っ取り早い。

「どうした?ムンバイに行きたいのか?」

 声をかけてきたのは駅周辺にたむろしているバスの客引き。 列車からあぶれた客を集めるのが彼の仕事らしい。

「いいえ。デリーに行きたいの。でも、キャンセルがでなくてね」

「俺がなんとかしてやるよ。」

 2,3人の男が寄ってきた。

「でも、バスはヤダよ、いくら何でも。エアコンの列車で明日の夜までにはデリーに着きたい」

 もう、あの凍えるような寝台列車に乗るのはごめんだ。

「よしわかった。とりあえず、この列車はともかく、次のラジタニならなんとかなるかもしれない。 あとは、アマダバードじゃなくて、バローダ発の列車にすれば可能性はある」
「とりあえず、このチケットをまずキャンセルしてきて」


 男に言われなくてもキャンセルはしなければならなかったので、また窓口に並び、20ルピーのキャンセルチャージを差し引いた金を受け取った (関係ないが、予約にも手数料をとるくせに、更にウェイティングをキャンセルしたチケットまで手数料を取るなんて、インドの国鉄はせこい)

 キャンセルした金を男に渡すと、当然のように予約オフィスのスタッフ用の入り口から中に入っていく。 十数分後、彼が持ってきたのは今晩のアマダバード発のラジタニエクスプレスのチケットだった。

「ちょっとまって。これもウェイティングじゃん!しかも120番台だよ!」
「まあ、待て。今日の4時にもう一回ここに来い。その時にちゃんと席を確保してやる」

 ここでちょっと補足をしておくと、ラジタニエクスプレスというのはインドの大都市間を結ぶ長距離特急で、全車両がエアコン車両というとてもハイグレードな列車である。
 停車駅も少なく、この名前の列車に乗れば間違いなく目的地まで最速で行ける。 日本で言えば新幹線の位置にいる列車だ。

 だから、当然お高い。 普通の寝台特急のエアコン車両をキャンセルした金で買える切符であるはずがない。

 彼に払う手数料とラジタニの差額はチケットが完全に取れてから払う約束をし、 とりあえずキャンセル待ちのチケットを受け取った。
 しかし、つくづく宿が24時間制の宿で助かった。今日の夜10時まではチェックアウトしなくて済むんだから。駅で荷物持って待ちぼうけなんて嫌すぎる!

 4時になり、再び予約オフィスの前に行く。
 何故かしらんが、先ほど交渉した男の知り合いまでやって来ていて、今度はそいつがチケットを持ってオフィスの中に入っていった。

 男が戻ってきたとき、手にしていたチケットは27番だった。 たったの数時間で100人もぶっちぎったが、でも、まだウェイティングには変わりない。

「ま、もうほとんど大丈夫だ。あとは列車の発車する1時間前にもう一度来い」

 列車の発車時刻の1時間前、約束通りまたオフィスの前に行った。 パッキングも済ませたし、帰る気満々である。
 男は私からチケットを受け取ると、更に交渉に出向き、ねばりに粘って席をもぎ取ってきた

 おっしゃっ。バスじゃなくて電車でデリーに帰れる~!!

 客引きに約束の手数料と差額を払いチケットを受け取った。交渉が難航して男が助け船を拾ったために、手数料をホンのちょっぴり上乗せされた。
 勿論、こっち外国人だと言うことも大いに関係するだろうが。


 当たり前だが、これは違法である。

 インドの公務員の給料はとても安いと聞く(具体的な収入までは知らない)。 だから、臨時収入を得るために彼らもいろいろ考える。彼らは裏金を貰う見返りに切符を手配してやる。 そして、客引きはそんな彼らと手を組んで収入を得ている。

 警察も当然こういう輩の存在を知っている。
 時々手入れに来るが(私がいたときも何回か来た) それは、悪を摘発するためではなく、小金を稼ぐためである。
 金の受け渡し現場を押さえて、手数料の中からピンハネするのだ。

 客引きのほうも慣れたモノで、警察の気配がすると、蜘蛛の子を散らすようにどこかに消えた。
 警官は、客引き達が散っていくのを遠くから見届け、「ちっ」と舌打ちして再びパトカーで走り去っていった。

 私はとりあえず今日、電車に乗りたかった。
 インドからバンコクに戻る航空券はオープンチケットだから変更は利くけど、一応、年始くらいはまともに出勤しないと肩身が狭い。
 客引きと切符売りは金が欲しかった。
 お互いの利害が一致した結果がこうである。

 やってはいけないことだと言うのはわかってはいるし、そして、日本だったら怖いから間違いなくやらない。(昔よくコンサート会場にダフ屋がいたけど今でもいるんですかね)
 それにこういうことが積み重なると客引きも切符売りもどんどん値段をつり上げて調子に乗ると思う。

 インドでこういうことがまかり通っているのは、給料が安いとか、物価がどんどん値上がりしていくこととか、生活水準が上がって物欲が膨れ上がっていることとか、いろんなことが関係しているが、とにかく、彼らはお金が欲しいのだ。

 正論から言うと私のしたことを軽蔑する人もいると思う。私も客観的立場だと批判しちゃうかも。
 こういうことをするからいつまで経っても悪い人は悪いままとか、真面目に働かなくなるとか、悪いとわかっていて悪に加担するのかとか。

 でも、私はインドで都合良く頭を切り換えることを憶えたのだ。

 逆のパターンで考えると、正攻法で列車の予約を入れてキャンセル待ちをしても列車に乗れるとは限らないということだ。 誰かが客引きを使って、私に回ってくるはずのチケットをもぎ取っていたのかもしれない。

 けして褒められたことではないし、お金も勿体ないのでなるべくやらないほうがいいと思います。
 良心の呵責に耐えられない場合は、旅行代理店に行くことをオススメしますが、でも、やってることは同じです。観光客少ない町なので宿に紹介してもらうとかしてみてはいかがでしょうか?
 
 ちなみに、最初のインド旅行の時にもお金で飛行機の席を貰ったが、3年後の去年、相場は3倍に膨れ上がっていた。 袖の下も物価と共に上昇しているらしい・・・。

 ところで、先ほどラジタニはエアコンが着いていて早いだけのようなことを書いたが、実はいろんな意味で他の列車とはちょっと違って高級である。

 まず、一車両ごとに数名の服務員がついている。 寝具係、ウェイター、掃除係とそれぞれ仕事の種類ごとに人がいる。
 寝具係なんて、乗客一人一人にシーツと枕カバーと毛布を渡したら、あとは客が降りるまでなーんにも仕事がない。途中駅で人が乗り降りすることもあるが、なんせ停車駅がとっても少ない列車だし・・・。

 でもウェイターだけは忙しそうだった。
 まず、乗車してすぐにミネラルウォーターが配られた。その後は、イブニングブレックファースト、チャイ、スープ、夕食、デザートと次々に食べ物がでてくる。
 片づけるのも勿論彼らの仕事。 片づけが終わったら終わったで、今度はトレーを綺麗に拭き、明日の朝食のためのセッティングをしていた。
 ま、朝食ってゆってもキャンディー二個とビスケットとチャイだけでしたが。
イブニングブレックファースト
イブニングブレックファースト
夕食
夕食

 ところで、たまに客の中に「ご飯いらない」とか「アイスいらない」とかいう人がいるらしく、余った食事を私にくれようとするのには参った。彼らの作業場に最も近い席だからである。

 こんなでかいサモサもうくえんっちゅーに。 チキンカレーももういらなーい(ノンベジが大量に余ったらしい)!ただでさえすごい量だ。お代わりする人の気が知れない。
 グリッシーニは気に入ったので貰っとくと、他の車両で余ったグリッシーニまで持ってきてくれた。うーん。明日の昼飯に食うか・・・。


- インド旅行記:なんとなくグジャラート 目次 -
プロローグ
第1話 冬のデリーはなんだか胡散臭い
第2話 埃と排ガスとノイズの町
 →「アマダバードの名所」
第3話 何処にでもいるやり手ばばあ
第4話 彼女が水着に着替えたら?
 →「ディーヴの日常」
第5話 インドは広いな大きいな

第6話 ジミ~な年越し
 →「わりと充実?ジュナーガルの1日」
第7話 ローカル列車でごとごとたび
 →「聖なる山シャトルンジャヤのしょぼい写真」
第8話 ローカルバスでごとごとたび
 →「色気よりも食い気という言葉は私のためにある」
第9話 切符の買い方指南(裏技)
エピローグ

タグ:アマダバード|インド|キップ手配|ラジタニエクスプレス|裏技

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