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  [概要: なんでこんなに凄腕のシェフが山の中に・・・]

 第12話 気まぐれスープと謎のシェフ。(パスー-カリマバード-ギルギット)


フンザの川岸 日本の山の上と風景が違って驚く。河口付近のように広くゆったりとした流れの川。
空も吸い込まれそうに青くて、刺すように冷たい空気のなかで佇んじゃったりして。
でも、紫外線が強いことを侮るなかれ。

 カラコルムハイウェイの先、フンジャラーブ峠にお名残惜しさを感じながらも、我々はパスーを後にした。
 途中、河原で車を止めて遊んだり、路上で待ち伏せている少年から桃を買ったり、車のタイヤがパンクしたりしたことを覗けば行きと全く同じ行程。選択の余地がないのだからしょうがないのだが。

 一つ意外だったのは、道々出会う女性陣がにこっと笑顔を見せ、我々に手を振ってくれたりすること。 パキスタンも山の上の方に来ると、喜んで写真の被写体になることを承諾してくれると聞いたが、ホントかもしれないな。 あくまでも、本人の承諾を撮ってから撮らせて貰ってね。

※ この地方はイスラムの宗派はイスマイール派。イスマイール派は他の宗派より戒律が緩いこと、女性が社会生活に関わっていることが多いこと等で、他の地方と雰囲気が違う(らしい)。私が女だと言うことも往々に関係するとは思いますが。
桃売りつけ少年(笑)
桃売り少年団
 車はあっちにより、こっちによりしながら、カリマバードにたどり着いた。
 フンザに来る多くの旅人が外さない場所だ。なぜって、町が山の斜面に沿って作られているため、窓からの眺望が最高なの。
 目の前に流れるフンザ川の向こうに、ラカポシ(7788m)、ディラン(7257m)、スパンティーク(7027m)などの大山脈がそびえ立つ。宿自体が斜面にあるから目の前に邪魔する物が何もない。 つまり、何処の宿に泊まっても、大パノラマなのだ。(注:小さな宿は場合によっては隠れます)

 反対側の部屋に通されたとしてもご安心あれ。背後にはウルタル峠がお待ちである(安宿は目の前が木や隣の宿の壁だったりしますけど)。
 そして、近くには農村が多く、緑がいっぱい。5月は杏の花が咲き乱れ、薄ピンクのアーチを散歩出来ちゃう。

 空気は綺麗だし、眺望はいいし、つい長居してしまう旅行者の気持ちはわからなくはない。 ・・・でも、私はここに一泊もせず帰るのだ。ちぇ。

「S美さん、ごはん食べよ。」

 我々は迷うことなく、誰もが絶賛するコシオサンゲストハウスのレストランへ向かった。
 KOSHIOSANGUESTHOUSEは、ニューガニシュロードの二つ目の大きなカーブの下の安宿が固まっている一角に。それよりももっと上は中級クラスのホテルがぽつぽつとある。

 コンクリートが打ちっ放しの2階建ての建家のルーフにレストランがあった。食事をしながら山の眺望を楽しめる作り。
 そのレストランに入った瞬間、「あれ?」と思った。
 評判がすごく良かったので、質素な作りに拍子抜けした。そこらに並んでいる薄汚れたプラスチックのいすとテーブルに、これまた薄汚れた人間がだら~と腰かけているように見えた。なんて言うか、レストランをレストランとして小綺麗に作ってないので、フィルターがかって見える。

「何になさいますか?」

 髭もじゃで、くるくるの癖毛が伸び気味でちょっとぼさぼさ。すり切れたジーンズに色あせたシャツを着た男性がオーダーを取りに来た。

「えっと、サンドイッチと~、このマウンテンティーってなに?あ、そう、じゃあそれと、本日のスープは?」

「スープの材料は決まっていません。そのときにある物で適当にシェフが作ります」

「シェフって?」

「私」

え?あ、ああそう。じゃあ、スープもお願いします。」

 男性はにっこりと笑顔でメニューを受け取ると、背後にある厨房に入っていった。
 日本で、学校や古い小さなビルの屋上に出たことがあるでしょ。あのエレベーター室とか階段の出口を思い浮かべて欲しい。漫画なんかだと不良その上にのぼって授業をさぼっていたりする。あそこ。あんな感じなんです、厨房が。こじんまりとしていて、薄暗い。そして、あのシェフ。料理人には見えん。いろんなことが、私の勝手な想像の範疇からずれていた。
「どうぞ」

 十数分後、シェフ自らが給仕してくれたスープにおそるおそる口を付けた。

 一口すすってビックリ。うまーーーい!

 グルメでなくて、申し訳ない。材料がなんなのか、どういう味なのか、まったく表現出来ない。 スープを何で取ってるのかもよくわからない。パキスタンだから少なくとも豚ではないとしか言えない。 でも、鶏とも魚とも思えない。獣臭さも魚臭さもないってことは植物系?

 スープに浮いている実のホロ苦のアクセントがまたポイント。スパイスの一種なんだろうけど、すみません、わかりません。

「ね、このサンドイッチ食べてみなよ。ものすごい美味しいよ」
シェフの気まぐれスープ
シェフの気まぐれスープ
 S美さんのサンドイッチを一口、これもまた仰天のうまさ。今までサンドイッチ一つがこれほど美味いと思ったことはない。 薄っぺらいパンに、チーズとうすーいトマト(ホントに薄い。2mmくらい)を挟んだだけのシンプルなサンドイッチなのに、めちゃくちゃ美味い。これは、チーズが旨いんだ。ものすごく味が濃い。 恐らくパンに塗ってあるバターもできたてだ。パンもしっとり、甘みもバランス良い。く~、最高っ。

 他の宿の宿泊客までここに食べに来るという理由がわかった。こりゃ、相当の腕のコックがいないと勝ち目がないよ。 家庭料理ではなく、完全にレストランの味。それもすごく美味いレストランの味。しかも、リーズナブル。

 絶対にこの宿も長期旅行者の長居に一役かってる。ギルギットで日本の味、カリマバードでフンザの味と繰り返しているのだ、彼らは。・・・宿のベッドに虫が出るとはいえ(笑)

 このシェフ、大きな町か、もしかしたら、外国で修行してたりして。日本でも有名レストランで修行したシェフが軽井沢でレストラン開いちゃったりしてるじゃない?そんな印象を受けた。

 とにかく、こんなところでスゴイ料理人に巡り会い、病み上がりでこれ以上食べれない自分の体を呪った。 うー、もっと違う料理も食べたかったよ~。


 フンザのKOSHIOSAN GUEST HOUSE。要チェックだ。

 道々の写真はここからジャンプしてください!



- インド・パキスタン旅行記:木っ端みじんの旅 目次 -
プロローグ
第1話 相変わらずワルはワル。(その1)
第2話 相変わらずワルはワル。(その2)(
 →【写真】デリーでいろいろ食らう。
第3話 やっぱり、アムリトサルが好き。
 → 【写真】アムリトサルから国境の町アタリへ
第4話 たかが国境。されど国境。
第5話 早い、安い、綺麗・・・でも不快?
第6話 町を歩けば、男にあたる。
 →【写真】何もないけど好きな町。ピンディ
第7話 日本人嫁獲得大作戦?
第8話 旅、此即ち学習
 →【写真】ギルギットを歩く。
第9話 風の谷のナウシカごっこ
第10話 フンザドライブのすすめ
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その1
第11話 旅の恥は掻き捨てないように
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その2


第12話 気まぐれスープと謎のシェフ。
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その3
第13話 山を下りるもまた一苦労
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その4
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その5
第14話 ラホーール、おそるべしっ(その1)
第15話 ラホーール、おそるべしっ(その2)
第16話 こんな列車の国境越え
第17話 車掌も密かにワル。
第18話 我ラクダのしりに物思う
第19話 損して得取れって・・・真実よ
第20話 やっぱ、アグラの街はうざい!
第21話 素敵なリキシャワラとの出会い
第22話 カルチャーショック受けちゃった?
第23話 アーユルヴェーダで禿を治そう!
第24話 そして、木っ端みじんの旅
エピローグ

タグ:カリマバード|シェフ|パキスタン|フンザ

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