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  [概要: あの、直前でも窓口でキップを売ってくれれば・・・って言い訳。]

 第17話 車掌も密かにワル。(ラホール-デリー)

 国境駅ワガにてインド入国。なんだかんだと時間を取られつつ、16時過ぎに国境駅脱出(面倒くさいので詳細略)。ワガ発の列車は本数が少ない上に、デリー行きは夜中発の寝台車のみだったからだ。

 駅の外に待ちかまえる私設両替商を振りきり、さらに数人のタクシードライバーを振りきったところではたと考えた。

「・・・急げば夕方発のシャダプティエクスプレスに間に合うのでは?」

 振り切ったはずのドライバーを呼びつけ値段交渉に入った。

「ねえ、アムリトサル駅までいくら?」
「350ルピー」
「高い!200ルピーだったら乗る。」
「それは、安すぎ。300!」


 アムリトサル-国境間は基本的に、350から始まるらしい。行きにアムリトサルの駅で提示された価格と全く同じである。そして、ドライバーの譲らない態度を見ていると、さほどふっかけてはいない様子にとれる。

 最終的に「17時00分までにアムリトサルの駅に着けたら250ルピー払う!」という条件で交渉成立!
 着かなかったら200ルピーしか払わない。だって、今日中にデリーに着く列車に間に合わないのなら、タクシーを使う意味がないのよ。バスに乗ればいいんだもん。

 ドライバーは、真剣な面持ちでハンドルを握り、クラクションをならしっぱなしでタクシーを走らせていった。
 ほんのわずかの差で50ルピーの損がでるとなれば必死になるというモノ。結果、列車の出発5分前に見事にアムリトサル駅に到着である。


 タクシーを飛び降りた私は一目散に切符売り場に駆け込み、「17時5分発のシャタブディでデリーにいきたーい!」と訴えた。

 窓口の向こうの係員は、「出発間際だから切符の販売終了」とあっさり拒絶した。しかし、続く言葉を聞き逃してはいけない。「シャタブディは1番ホームから出るよ。行ってみたら?」と、こう言うのである。

 そーね、そうよね。あなた、車掌に何とかしてもらえって言ってるのね。なんとかしてもらいますとも!
 「わかった!ありがと!!」とお礼もそこそこ、一目散にプラットホームに向かってダッシュした。


 デリー行きのシャタブディエクスプレスは目の前のプラットホームで既に出発準備が完了していた。あとは定刻通りに出発するだけという感じで、乗り込む客もあまりいないようだ。
 紺地に金色のエンブレムのパリっとした制服を着ている車掌は、出発間際までホームをうろうろしているのですぐに探し出せる。とある車掌が1人になったところを見計らい、早速交渉に出た。

「どうしてもこの列車でデリーまで行きたいんです。でも切符を買ってません。乗せてもらえませんか?」

 下手に出つつ、丁寧に丁寧にお願いするも、「切符を買ってないならだめだよ」とあっさりと断られる。

「いえ、だって、窓口のにーちゃんがホームにいけって言ってたんですよ」
「でも、無理なものは無理なんだよ」

とあからさまにめんどくさそうな顔で言う。

 ここで怯んだり、怒ったりしてはこちらの負けである。目的はこの列車に乗り、今日中にデリーに帰ること。車掌のご機嫌を損ねては元も子もない。

 2人いるこの列車の車掌に交互にお願いをしつつ、拒否される度に、「困ったなぁ」という落胆の表情で立ちつくす。そんな態度を繰り返していると、まさに列車の出発直前に1人の車掌がこっそり近づきこう言った。

「1350ルピーかかってもいいか?」

 そうですか、エグゼクティブクラスに空きがありましたか。エグゼクティブクラスだろうと何だろうと乗りますとも!今日、デリーに帰りたいんだもの。

「勿論です!デリーに帰れるなら、払います!」
「じゃあ、C3コーチの13番に行って」

 ・・・あれ?C3ってチェアカー(エアコンの1等普通座席)の車両ナンバーじゃないの? でも、立場上、文句は言えん。

 言われたとおりC3の車両に乗り込むと、やっぱり通路を挟んで計5列の座席が並んでいて、これはどう考えても普通席のチェアカーで、乗客は私を含めせいぜい10名ほどしか乗っていなかった。

 この座席は700ルピー弱のはずだ。いくら何でも1350ルピーは高すぎるのだが、約束した以上払わねばならないか。

 ちょっとは交渉してみるかなぁ?なんて思ったところで、車掌が検札に現れたが、他の乗客の切符のチェックが終わると、あれ?行っちゃうの?

 「お金は?」と目で合図する私に、向こうも向こうで「もうちょっと待って」とアイコンタクトを飛ばす。やっぱぼったくる以上、人前で交渉できないってことか~?

 その後、途中駅で新たな客が乗り込むたびに車掌は現れる。そして、新しい乗客の切符はチェックするのだが、私のことはほったらかし。

 ・・・さては忘れてるのか?いやでも、やたらに目は合うし、お金を払ってないのはわかっているに決まっている。
 でも、その事実を知っているのは車掌だけ。つまり、切符を切らず、1350ルピーをそのままポケットに入れるってことかもしれない。

 元々不正に乗り込んだのはこちらなので座席の値段が高いのはこの際しょうがないこととして、問題は、切符を切ってくれないことである。 ・・・ニューデリー駅の出口で引っかかったら「・・・なくしちゃった!ごめんなさい」と泣くしかあるまい。

 車窓にのぞく風景が、田園から徐々に住居に変わり、そろそろ終点ニューデリー駅という段になると、ようやく車掌は、周りの乗客の様子を伺いながら、こそこそとやってきた。

 私の横に身をかがめ、ぼそっと一言、「600ルピー」。意外な言葉に一瞬耳を疑った。1350でなくて、600??

 シャタブディの正規料金より安いんですけど・・・。飯も食ったし、しっかりサービス受けたんですよ、あたし。

 気を変えられては困る。「OK.OK」と、二つ返事でお金を渡した。当たり前だが、ここで「チケットをくれ」なんて、言ってはいけない。
 彼は小遣いがほしい。私はデリーに帰りたい。お互いの利害が一致した結果だし、リスクを負ってるのは車掌も同じ。ばれたら怒られるのは向こうも一緒ってこと。

 それに、誰も損をしてないと思うのだ。(※インド国鉄以外は)
 車内サービスのウェイターだって、ちゃんと月給をもらってるのだし、もしかしたら、乗客が増えたらチップが増えるかも(私はあげない)。車内食の数だって、座席分用意してるのだから、 余らせても意味がない。
 損と言えば、車内食を1人分よけいに配ったウェイターの労力と私の体重の分だけ増えた列車の燃料費くらいか?

「よし、あとは泣く準備だな・・・。」

 下車後、気合いを入れて出口に向かうも、押し寄せる人並みのすごさに立っている駅員も全くやる気を見せず、 切符の回収なんてしちゃいない。よし、このまま人混みに紛れて逃げるべし!!

 なんだか、私もだんだんインドの旅に慣れてきたよなぁ。行く度に・・・厚かましくなる。



- インド・パキスタン旅行記:木っ端みじんの旅 目次 -
プロローグ
第1話 相変わらずワルはワル。(その1)
第2話 相変わらずワルはワル。(その2)(
 →【写真】デリーでいろいろ食らう。
第3話 やっぱり、アムリトサルが好き。
 → 【写真】アムリトサルから国境の町アタリへ
第4話 たかが国境。されど国境。
第5話 早い、安い、綺麗・・・でも不快?
第6話 町を歩けば、男にあたる。
 →【写真】何もないけど好きな町。ピンディ
第7話 日本人嫁獲得大作戦?
第8話 旅、此即ち学習
 →【写真】ギルギットを歩く。
第9話 風の谷のナウシカごっこ
第10話 フンザドライブのすすめ
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その1
第11話 旅の恥は掻き捨てないように
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その2


第12話 気まぐれスープと謎のシェフ。
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その3
第13話 山を下りるもまた一苦労
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その4
 →【写真】カラコルムハイウェイをゆく その5
第14話 ラホーール、おそるべしっ(その1)
第15話 ラホーール、おそるべしっ(その2)
第16話 こんな列車の国境越え
第17話 車掌も密かにワル。
第18話 我ラクダのしりに物思う
第19話 損して得取れって・・・真実よ
第20話 やっぱ、アグラの街はうざい!
第21話 素敵なリキシャワラとの出会い
第22話 カルチャーショック受けちゃった?
第23話 アーユルヴェーダで禿を治そう!
第24話 そして、木っ端みじんの旅
エピローグ

タグ:インド|シャダプティエクスプレス|デリー|バクシーシ|切符|袖の下|裏技|車掌

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